カーティスの定理を高校数学の範疇で証明する。〜物理屋の格闘

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知り合いの塾の講師に、面白い問題を聞きました。その講師の生徒がわからないと言って質問した問題でした。私も見たことがなく、パッと見ただけでは証明が思いつきませんでした。そこで家に帰りじっくり考えた結果、一つの証明方法を思いつきました。調べてみるとその問題はカーティスの定理と呼ばれる有名な問題であることが判明したわけですが、この定理の裏にはシルベスター数列という数列も関わっています。定理はn=4程度までなら、大学の入試問題にも出てくるようなものです。一般のnに関する証明はなかなか味わい深いものかなぁと思います。おそらく同じ証明方法は掲載されていません(間違いだからかもしれませんが)ので、今回は、定理の主張を確認し、その証明方法を紹介します。

*現在、カーティスの定理の証明に不備があることがわかりましたので、再考を行なっております。不備が直り次第、修正したいと思います。

カーティスの定理

$$\sum_{i=1}^{n}\frac{1}{a_{i}}<1 a_{1}\leq a_{2}\leq\cdots\cdots\leq a_{n}$$

を満たす自然数a_{i} (1≦ i ≦ n)について、

$$\sum_{i=1}^{n}\frac{1}{a_{i}}$$

を最大にするa_{i}はa_{1}=2として、i≧2について

$$a_{i}=\prod_{j=1}^{i-1}a_{j}+1$$

であり、その最大値は

$$\frac{\prod_{i=1}^{n}a_{i}-1}{\prod_{i=1}^{n}a_{i}}$$

ただし、

$$\prod_{i=1}^{n}a_{i} = a_{1}\cdot a_{2}\cdot a_{3} \cdots a_{n}$$

補題1

$$p+\frac{1}{n}<1$$

を満たす1未満の正の有理数p, 自然数nについて

$$I=p+\frac{1}{n}$$

を最大にするpは

$$m\in \mathbb{N}$$

として

$$p=\frac{m-1}{m}、n=m+1$$

とかける。

補題1の証明

pは1未満の正の有理数であるから自然数a, b(a<b)を用いてp=a/bと書ける。このとき、

$$p+\frac{1}{n}<1$$

よりb-a≠0に注意して

$$\frac{1}{n}<1-p=\frac{b-a}{b}=\frac{1}{\frac{b}{b-a}}$$

nは自然数であることからa, bが与えられたときに条件を満たしながらIを最大にするには、ガウス括弧[ ]を用いて

$$n=\left[\frac{b}{b-a}\right]+1$$

となれば良い。このとき Iは、

$$I=\frac{a}{b}+\frac{1}{\left[\frac{b}{b-a}\right]+1}$$

b-a=c(0<c), b=ck+r(kは非負整数、rは0≦ r≦ c-1を満たす整数)を用いると

$$I=1-\frac{c}{b}+\frac{1}{k+\left[\frac{r}{c}\right]+1}$$

$$I=1-\frac{c}{ck+r}+\frac{1}{k+1}$$

Iを最大化するためには、rを最大化すればよいからr=c-1と選ぶ。このとき

$$I=1-\frac{c}{ck+c-1}+\frac{1}{k+1}$$

a, b, c, kの変数関係から独立変数はa, cに取ることができるのでIを書きなおすと

$$I=1-\frac{c}{a+c}+\frac{c}{a+c+1}$$

他の文字を定数としてaで微分する(偏微分の記号を用いているが、実質、2変数以上の微分で高校数学の教科書にも載っている)。

$$\frac{\partial}{\partial a}I=\frac{c}{(a+c)^{2}} + \frac{-c}{(a+c+1)^{2}} > 0$$

よって、Iはaに関して増加関数なのでIを最大化するにはaを最大にすれば良い。すなわち、

$$a=b-1, n=[b]+1=b+1$$

記法をそろえるためmを自然数としてb=mとすると

$$p=\frac{m-1}{m}, n=m+1$$

以上より、補題1が示された。

補題2

$$I=\frac{m-1}{m}+\frac{1}{m+1} m\in \mathbb{N}$$

で定まるIはmに関する制約の下で(m-1)/mが最大となるときに最大となる。

補題2の証明

示すべきことがらはIがmについて単調増加であることを示せばよい。

$$\frac{d}{dm}I=\frac{(m+1)^{2}-m^{2}}{m^{2}(m+1)^{2}}>0$$

より、Iはmについて単調増加関数であるからIが最大となるのはmについての制約の下で(m-1)/mが最大となるときである。補題2が示された。

定理の証明

自然数nに関する数学的帰納法により示す。

(1) n=2のとき、a_{1}=2として、a_{2}=3となるので成立。

(2) n=k(n≧2)のとき、定理が成り立つと仮定する。すなわち、

$$\sum_{i=1}^{k}\frac{1}{a_{i}}<1 a_{1}\leq a_{2} \leq \cdots\cdots \leq a_{k}$$

を満たす自然数a_{i} (1≦i≦k)について

$$\sum_{i=1}^{k}\frac{1}{a_{i}}$$

を最大にするa_{i}はa_{1}=2としてi≧2について

$$a_{i}=\prod_{j=1}^{i-1}a_{j}+1$$

であり、その最大値は

$$\frac{\prod_{i=1}^{k}a_{i}-1}{\prod_{i=1}^{k}a_{i}}$$

であると仮定する。

$$I(k+1)=\sum_{i=1}^{k}\frac{1}{a_{i}}+\frac{1}{a_{k+1}}$$

について考える。

$$\sum_{i=1}^{k}\frac{1}{a_{i}}$$

は有理数。1/a_{k+1}はある自然数n’を用いて1/n’を用いて書けるので補題1を用いてI(k+1)が最大となるのはある自然数mを用いて

$$\sum_{i=1}^{k}\frac{1}{a_{i}}=\frac{m-1}{m}$$

と書けるときである。ところで仮定より

$$\sum_{i=1}^{k}\frac{1}{a_{i}}=\frac{\prod_{i=1}^{k}a_{i}-1}{\prod_{i=1}^{k}a_{i}}$$

と書けるので、

$$\prod_{i=1}^{k}a_{i}=m$$

とおけば、

$$\sum_{i=1}^{k}\frac{1}{a_{i}}=\frac{m-1}{m}$$

と書くことができる。また補題2よりこの部分が最大となるとき、I(k+1)も最大となる。この時のa_{k+1}は補題1より

$$a_{k+1}=m+1=\prod_{i=1}^{k}a_{i}+1$$

である。このa_{k+1}は明らかにa_{k}≦a_{k+1}を満たす。またこのときI(k+1)の最大値は

$$I(k+1)_{max} = \sum_{i=1}^{k}\frac{1}{a_{i}}+\frac{1}{a_{k+1}}$$

$$I(k+1)_{max} = \frac{\prod_{i=1}^{k}a_{i}-1}{\prod_{i=1}^{k}a_{i}}+\frac{1}{a_{k+1}}$$

$$I(k+1)_{max} = \frac{\prod_{i=1}^{k+1}a_{i}-a_{k+1}+\prod_{i=1}^{k}a_{i}}{\prod_{i=1}^{k+1}a_{i}}$$

$$I(k+1)_{max} = \frac{\prod_{i=1}^{k+1}a_{i}-1}{\prod_{i=1}^{k+1}a_{i}}$$

ゆえに、n=k+1のときも定理は成り立つ。以上より数学的帰納法により、n≧2以上の自然数について定理が成り立つことが示された。

いかがでしょうか。正直、上の論理が正しいことは誰にも確認していないので、誤りを発見した方は指摘していただけると幸いです。よろしくお願いします。

最後までご覧いただき、ありがとうございます。

コメント

  1. nemurukamenemurukame says:

    補題1の証明の途中に間違いがあることに気づいて、修正しました。(2020/1/30)

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