前回、「真面目でおとなしい」A君が40点程度しか取れなかった定期テストで、100点を取れるようになるまでにどのような指導をしていたか、を紹介しました。今回は、男性の先生にとってやや扱い辛いと思われる対「女子高生」の場合を紹介していきたいと思います。
第一印象(見た目)は大事に
個別塾で、女子高生を担当する場合、実は第一印象が極めて重要です。というのも、女子高生というのは男子高校生と違って、やや扱い辛い側面があるからです。特に先生が「男性」の場合(数学の先生の場合、男性の先生のほうが多いと思いますが)、第一印象がよくないと門前払いをくらいます。つまり、生徒の方から「この先生、変えて欲しい」と言われてしまうということです。
第一印象というのは、50%程度が「清潔感」と「身だしなみ」です。男子生徒はあまり気にしないのですが、女子生徒は少しでも先生が「不潔」だと思うと、その先生がいくら頭が良く教え方がうまくとも、気に入りません。というわけで、もし女子高生を個別で担当することになるようなら、女性と付き合うという感覚で「清潔感」を磨いておかないと、相手によっては全く話を聞いてくれないということもあります。
さて、見事「清潔感」というハードルをクリアしたとしても、それはスタート地点に立ったにすぎません。いや、むしろそれ以下の可能性があります。相手は数学が嫌いで、教科書を開くことも嫌だと思っているはずです。その相手に「嫌いな数学」をいわば押し売りするわけですから、印象がよいわけがありません。
ただ、一つ重要なことがあります。多かれ少なかれ、その生徒は「苦手な数学をなんとかしたい」という気持ちを持っているはずなのです。例えばこれが小学校や中学校の生徒であれば、親が強制的に塾に通わせているという例がありますが、女子高生の場合、本当に数学をどうでもいいと思っているならわざわざ塾に来ることはないはずです。そこで、先生の立場からすると、この女子生徒の気持ちを汲み取り、それを足場にしていくことが最大の課題となります。皆様なら、どのように女子高生にアプローチしていくでしょうか。
話を「する」のではなく「聞く」姿勢
新人で、数学が大好きな先生に限って犯しがちな典型的な間違いは、「自分本位で授業をする」ということです。数学が大好きで得意な先生はどこの問題が重要で、どの問題を解けるようになれば点数を取れるかを知っています。そこで、女子生徒に対して、自分から「この問題は解いてみて」とか「あ、わからない? じゃあやり方を教えよう」とか、積極的にアプローチしていくと、相手はますます離れていくばかりです。ある程度数学の能力があって、その上で数学を得意にしていきたいという生徒の場合は、このやり方でも十分通用するのですが、こと「数学が嫌いだ」という生徒に対しては全くの逆効果、となってしまいます。自分ではうまく授業をしたつもりでも、授業をした後に塾長から、「担当を変えてくれと言われたよ……」と言われてしまうのです。まさに、新人時代の僕のように。
重要なことは、相手が何をわかっていないのかを探り当てて、それをど真ん中直球で説明していくことです。数学が嫌いな女子生徒にとっては、その先生がどれだけ頭が良いかというのはほとんどどうでもよく、いかに「自分のわからないことを理解してくれるか」ということを第一に考えているはずです。自分本位で授業をする先生など、わけのわからないことばかり説明する学校の先生(と思っているはず)と何も変わらないのです。
そこで、アプローチの仕方としてはとにかく「会話」をすることが大事です。会話の内容は数学に限ったことではなくて良いのですが、ネタを作るのが難しければ、その女子生徒が「いかに数学を嫌いであるか」ということをひたすら語って貰えば良いです。だいたい女子生徒というのは「自分の好きなことを語る」のと同じ程度に「自分の嫌いなことを語る」のを好みます。特に、初対面の相手には後者の方が話しやすいでしょう。せっかく数学が嫌いということをわかっているなら、それを利用しない手はありません。その会話で色々質問したりして、「あ、この先生話せる人だな」と思ってくれれば、それこそが真のスタート地点でしょう。少しずつ、雑談から実際に学校の授業の話に移り、どの単元を学んでいるかを聞く。そして、どの部分がわからないのかを聞く。そこまで話してもらえれば、あとは先生の腕の見せ所です。しかし、ここでも気をつけることがあります。
解説の途中でなんども立ち止まる
数学が得意な先生は、一つの問題を教える時、初めから最後までノンストップで説明することがあります。しかし、これは危険です。なぜなら、その方法は学校の先生がやっていることとなんら変わらないからです。学校の先生のいうことが理解できないから、塾に来たということを忘れてはいけません。そうではなくて、説明をしながら相手の表情を伺い、「わかっていなさそうなところ」で立ち止まることが大事です。おそらく初対面では相手の方から止めてくれないので、こちらから「これ、わかる?」と聞いてあげるのがいいです。信頼関係が芽生えれば自然と向こうから止めてくれるようになります。
この立ち止まる、というのは意外と難しいものです。「1:1」の個別授業なら可能ですが、最近の塾は「1:2」や「1:3」のようなところもあって、新人の先生が「1:2」で教えていると、つい立ち止まる暇を作れなかったりするものです。しかし、少なくとも関係性を作るまでは塾内での進度が遅くても、「立ち止まって丁寧な解説をする」ということを意識すべきです。極端な話、たとえ1問しかできなかったとしても「100%理解できた1問」と「10%しか理解できなかった10問」であれば、数学嫌いの女子高生にとっては前者の方がはるかに価値が高いと思ってくれるはずです。なぜなら、「この先生なら私の疑問を100%解決しれくれる!」と思ってくれるからです。このような「100%の理解」が続くと、次第にそれが信用に変わっていきます。そこまでいけば、少し「自分本位の授業」に変えていっても大丈夫なはずです。なぜなら、関係性を築いた後に重要になるのが「結果」だからです。
結果が出ると信用が信頼に変わる
そして、ここがもっとも高いハードルかもしれません。ただ、定期テストで70点の子を90点にするより、40-50点程度の子を60-70点に引き上げることの方がやりやすいです。女子生徒から信用された後は、その先生の腕の見せ所です。
僕が数学嫌いの生徒に定期テストの点数を取らせるために重要視していたのは定期テストの「予想問題」を作ってあげることでした。もし、その学校が過去問と同じような出題をするなら、なんとか過去問を手に入れてそれを解かせる、というのもありだと思います。個別の塾なら、同じ高校に通っている生徒が他にもいるはずで、その生徒の担当の先生に頼めば大抵の場合、手に入ります。というより、塾全体で過去問を保管している可能性もあります。ただ、過去問があまりあてにならないなら、自作の予想問題を作ってあげるとかなり効果があります。今までの傾向からどのような出題になるかを知っておいて、問題集や教科書などから問題を引っ張ってきて、それを1枚のプリントにしてあげる。このプリントを授業で使ったり、宿題にしたり、塾にいるときのテスト対策で使ってもらうことで完璧にマスターしてもらう。
そうすれば、よほどの進学校でもない限り、結果は出ます。学校の平均点程度なら十分期待できます。さらにこの方法で結果が出せれば、信用が信頼に変わり、その先生と数学の勉強をするのがまんざらでもなくなってくるはずです。うまくいけば、数学の勉強を好きになってくれるかもしれません。
僕が塾で働いて、周囲の状況を見ていて、男性の先生と女子生徒が良好な関係を築いている場合というのは、ほとんど必ず「先生」が女子生徒の悩みに寄り添っている、またはテストで「結果」を出している、というケースでした。特に後者よりも前者の比率の方が圧倒的に多かったと思います。
終わりに
さて、まとめると数学嫌いの女子高生に対し特に、男性の先生が気をつけるべき点は
- 清潔感
- 話を聞く姿勢
- 解説を立ち止まる
- 結果を出す
ということでした。1, 2, 3ができて信用されれば、4は自ずと達成できることかなぁと思います。
以上です。最後までご覧いただきありがとうございます。コメントあれば、ぜひよろしくお願いいたします。
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