区分求積法とはさみうちの原理

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こんにちは、スリーピングタートルです。
金曜日の夜(深夜)にも関わらず、高校数学を解いています。名前負けしていますね。

質問

この極限値はいくらになるのか教えてください。
そもそも解くことはできるのでしょうか?

$$\lim_{n\to\infty}\frac{1}{n}\sum_{k=1}^{n}\frac{1}{2\sqrt{\frac{k}{n}}+\frac{1}{\sqrt{n}}}$$

回答

回答します。そもそも解けるか、ということですが、少なくとも収束することは数値計算でわかります。数値計算は、プログラミングの初歩を知っていれば簡単にできますが、この場では数学的に解く方法を提示しようと思います。

形をみて、区分求積法を使うことを予想できます。区分求積法は、整数k, nを用いて次のような公式として知られています。

$$\lim_{n\to\infty}\sum_{k=1}^{n}f\left(\frac{k}{n}\right) = \int_{0}^{1}f(x)dx$$

見た所、本問ではこの公式が使えそうです。ただし、邪魔なものがあります。それが

$$\frac{1}{\sqrt{n}}$$

です。これがいなければ、即座に公式を利用して終わりです。ただし、これが分母にいてしかもkの和に参加しているので、切り捨てることができません。こういうときは、解析可能な二つの関数によって、はさみうちをして極限を計算するという手法があります。

まず、f(k/n)を次のように定義します。

$$f(k/n) = \frac{1}{2\sqrt{\frac{k}{n}}+\frac{1}{\sqrt{n}}}$$

邪魔な1/√nを取り去った式をg(k/n)とすると

$$g(k/n)=\frac{1}{2\sqrt{\frac{k}{n}}}$$

とかけます。g(k/n)については区分求積法を使うことができます。すなわち

$$\lim_{n\to\infty}\frac{1}{n}\sum_{k=1}^{n}g(k/n) = \int_{0}^{1}g(x)dx$$

と書けます。区分求積法を利用するコツはk/n -> x, 1/n -> dxという置き換えを試みる、ということです。k/n = xとすると、Δx = (k+1)/n – k/n = 1/nとなるので、辻褄は合います。

右辺の計算をします。

$$\int_{0}^{1}\frac{1}{2\sqrt{x}}dx = \left[\frac{1}{2}\times2\sqrt{x}\right]_{0}^{1}=1$$

これで、求める極限を上から1で抑えられることがわかりました。本問の極限が求められるなら、下から1で抑えることも可能なはずです。そこで、少しテクニカルですが、x>0のときに成り立つ次の関係を利用します。

$$\frac{1}{x+\delta x} > \frac{1}{x}-\frac{\delta x}{x^{2}}$$

実際に左辺から右辺を引くと

$$\frac{1}{x+\delta x} – \frac{1}{x}+\frac{\delta x}{x^{2}} = \frac{\delta x^{2}}{x^{2}(x+\delta x)} > 0$$

と計算できます。この関係式を現在の形に適用するため

$$x\to2\sqrt{x}, \delta x\to\sqrt{\delta x}$$

と置き換えたもの

$$\frac{1}{2\sqrt{x}+\sqrt{\delta x}} > \frac{1}{2\sqrt{x}}-\frac{\sqrt{\delta x}}{4x}$$

を考えます。この式も(左辺)ー(右辺)は0より大きくなります。f(k/n)について、k/n = x, 1/n = δxとおくと

$$f(x) = \frac{1}{2\sqrt{x}+\sqrt{\delta x}}$$

より、h(x)を

$$h(x) = \frac{1}{2\sqrt{x}}-\frac{\sqrt{\delta x}}{4x}$$

とおくと、x>0であるため常にf(x) > h(x)が成り立ちます。よって、h(x)を用いれば、極限を下から抑えることが可能です。

$$\lim_{n\to\infty}\sum_{k=0}^{n}\frac{1}{n}h\left(\frac{k}{n}\right) = \int_{0}^{1}\frac{1}{2\sqrt{x}}dx – \frac{1}{n}\lim_{n\to\infty}\frac{1}{4}\sqrt{\frac{1}{n}} \sum_{k=0}^{n}{\left(\frac{1}{\frac{k}{n}}\right)}$$

第1項は先ほどと同様に1になります。せっかくxに直しましたが、第2項はn, kに戻して計算します。

$$\lim_{n\to\infty}\sum_{k=1}^{n}\frac{1}{4}\frac{1}{n}\sqrt{\frac{1}{n}}\left(\frac{1}{\frac{k}{n}}\right) = \lim_{n\to\infty}\frac{1}{4}\sqrt{\frac{1}{n}}\sum_{k=1}^{n}\left(\frac{1}{k}\right)$$

ここで、

$$\lim_{n\to\infty}\sum_{k=1}^{n}\left(\frac{1}{k}\right)$$

を考えます。これは有名な形で

$$\lim_{n\to\infty}\sum_{k=1}^{n}\left(\frac{1}{k}\right) < 1+\int_{1}^{n}\log{x} = 1+\log{n}$$

と評価できます。よって、

$$\lim_{n\to\infty}\frac{1}{4}\sqrt{\frac{1}{n}}\sum_{k=1}^{n}\left(\frac{1}{k}\right) < \lim_{n\to\infty}\frac{1}{4}\sqrt{\frac{1}{n}}\left({1+\log{n}}\right)$$

ここで、√nの発散はlognの発散より速いので、右辺は0である。また左辺は0より大きいので

$$0<\lim_{n\to\infty}\frac{1}{4}\sqrt{\frac{1}{n}}\sum_{k=1}^{n}\left(\frac{1}{k}\right) < \lim_{n\to\infty}\frac{1}{4}\sqrt{\frac{1}{n}}\left({1+\log{n}}\right) = 0$$

はさみうちの原理より、

$$\lim_{n\to\infty}\frac{1}{4}\sqrt{\frac{1}{n}}\sum_{k=1}^{n}\left(\frac{1}{k}\right) = 0$$

あ、本命を使う前に、先に使ってしまいました。ここからが本番です。

$$\lim_{n\to\infty}\frac{1}{n}\sum_{k=0}^{n}h\left(\frac{k}{n}\right) = \int_{0}^{1}\frac{1}{2\sqrt{x}}dx – \lim_{n\to\infty}\frac{1}{4}\frac{1}{n}\sqrt{\frac{1}{n}} \sum_{k=0}^{n}{\left(\frac{1}{\frac{k}{n}}\right)} = 1$$

より、求める極限は下から1で抑えられます。以上の議論をまとめます。

$$h\left(\frac{k}{n}\right) < f\left(\frac{k}{n}\right) < g\left(\frac{k}{n}\right)$$

$$1=\lim_{n\to\infty}\frac{1}{n}h\left(\frac{k}{n}\right) < \lim_{n\to\infty}\frac{1}{n}f\left(\frac{k}{n}\right) < \lim_{n\to\infty}\frac{1}{n}g\left(\frac{k}{n}\right)=1$$

以上より

$$\lim_{n\to\infty}\frac{1}{n}\sum_{k=1}^{n}\frac{1}{2\sqrt{\frac{k}{n}}+\frac{1}{\sqrt{n}}} = 1$$

いかがでしょうか。

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