京大文系数学に現れるベクトルをテーマとする問題を(ほぼ)制覇する

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さて、今日はベクトル研究会にお集まりいただきありがとうございます。ってことで、片っ端からベクトル解くよ!

ていうか、もう解いてきたんでしょ。

あのね、ちょっとは文系の私のことも考えてよ。難しいよ!

あ、難しかった? でも楽しかったでしょ? それに、問題は全部文系の問題だし。

全然。

みよちゃんは?

ん? あ、まみ? 何か言った?

みよちゃん、寝てたでしょ。今日はちゃんと起きててよ。

わかった、わかった。

問題リストはこんな感じだね。

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1996年文系数学 第1問 回転周期の考察

問題
\(xy\)平面の原点\(O\)を中心とし半径1の円\(C\)上に定点\(A\)をとる。同じ円上の点\(X\)に対し、平面上の点\(Y\)を\(\overrightarrow{OY} = \overrightarrow{OA} – 2(\overrightarrow{OA}\cdot \overrightarrow{OX})\overrightarrow{OX}\)で定める。ただし、\(\overrightarrow{OA}\cdot \overrightarrow{OX}\)は\(\overrightarrow{OA}\)と\(\overrightarrow{OX}\)の内積である。このとき
(1) \(|\overrightarrow{OY}|=1\)であることを示せ。
(2) \(\overrightarrow{OY} = -\overrightarrow{OA}\)となる点\(X\)をすべて求めよ。
(3) 点\(X\)が円\(C\)を1回まわるとき、点\(Y\)は同じ円を2回まわることを示せ。

誰が解く?

じゃあ、あたしがやろっか。

よろしく!

わかった。まず(1)。
$$\overrightarrow{OY} = \overrightarrow{OA} – 2(\overrightarrow{OA}\cdot \overrightarrow{OX})\overrightarrow{OX}$$
として
$$|\overrightarrow{OY}|^{2} = \overrightarrow{OY}\cdot \overrightarrow{OY}$$
を計算する。
\begin{eqnarray}
|\overrightarrow{OY}|^{2} &=&
(\overrightarrow{OA} – 2(\overrightarrow{OA}\cdot \overrightarrow{OX})\overrightarrow{OX}) \cdot (\overrightarrow{OA} – 2(\overrightarrow{OA}\cdot \overrightarrow{OX})\overrightarrow{OX})
\end{eqnarray}
\(\overrightarrow{OA}\cdot \overrightarrow{OX} = a\)とおくと
\begin{eqnarray}
|\overrightarrow{OY}|^{2}
&=&
(\overrightarrow{OA} – 2a\overrightarrow{OX}) \cdot (\overrightarrow{OA} – 2a\overrightarrow{OX}) \\
&=&
|\overrightarrow{OA}|^{2}-4a\overrightarrow{OA}\cdot\overrightarrow{OX} + 4a^{2}|\overrightarrow{OX}|^{2}
\end{eqnarray}
\(|\overrightarrow{OX} | = 1,\ |\overrightarrow{OA} | = 1\)より
\begin{eqnarray}
|\overrightarrow{OY}|^{2}
&=&
|\overrightarrow{OA}|^{2}-4a^{2} + 4a^{2} \\
&=&
|\overrightarrow{OA}|^{2} \\
&=&
1
\end{eqnarray}
今、\(|\overrightarrow{OY}|\)は正だから
$$|\overrightarrow{OY}| = 1$$

うん。いいと思う。

じゃあ、続けるよ。
\begin{eqnarray}
2\overrightarrow{OA}
&=&
2a\overrightarrow{OX} \\
\end{eqnarray}
だから
$$\overrightarrow{OX} = \frac{1}{a}\cdot\overrightarrow{OA}$$
\(a\)を戻して、
$$\overrightarrow{OX} = \frac{1}{\overrightarrow{OA}\cdot \overrightarrow{OX}}\cdot\overrightarrow{OA}$$
点\(X\)は円の上で\(A\)に平行だから、候補は\(\overrightarrow{OX} = \overrightarrow{OA},\ -\overrightarrow{OA}\)で、両方とも実際に式に入れても成り立つ。

いい感じ。

じゃあ、最後は(3)。
\(\overrightarrow{OX} = (\cos{\theta}, \sin{\theta}),\ \overrightarrow{OA} = (\cos{\alpha}, \sin{\alpha})\)とおく。
$$\begin{eqnarray}
\overrightarrow{OY}
&=&
\overrightarrow{OA} – 2(\overrightarrow{OA}\cdot \overrightarrow{OX})\overrightarrow{OX} \\
&=&
(\cos{\alpha}, \sin{\alpha}) – 2(\cos{\theta}\cos{\alpha} + \sin{\theta}\sin{\alpha})(\cos{\theta},\ \sin{\theta}) \\
&=&
(-\cos{\alpha}\cos{2\theta}-\sin{\alpha}\sin{2\theta}, \sin{\alpha}\cos{2\theta}-\cos{\alpha}\sin{2\theta}) \\
&=&
(-\cos{(\alpha-2\theta)},\ \sin{(\alpha-2\theta)}) \\
&=&
(-\cos{(2\theta-\alpha)},\ -\sin{(2\theta-\alpha)})
\end{eqnarray}$$
よって、\(Y\)は\(X\)と逆向き、2倍の速さで円を回る。

あのさ、最後の問題で、みよは\(\overrightarrow{OA} = (\cos{\alpha}, \sin{\alpha})\)としてたけど、これって別に\(\alpha=0\)と考えて\(\overrightarrow{OA} = (1,\ 0)\)とおいてもいいんじゃないかな? そうだとすると
\begin{eqnarray}
\overrightarrow{OY}
&=&
(1, 0) – 2(\cos^{2}{\theta},\ \sin{\theta}\cos{\theta}) \\
&=&
(1-2\cos^{2}{\theta},\ -2\sin{\theta}\cos{\theta}) \\
&=&
(-\cos{2\theta}, -\sin{2\theta})
\end{eqnarray}
となって、2倍になることを確認できるけど。

なるほど、一般性を失うか、どうかっていうところだね。定点\(A\)を取った時、座標軸を\(A\)が\(x\)軸上にくるように回転すればよくって、その操作が内積の計算とは無関係であることを考えると、一般性は失われていない、と思う。だから、ようこちゃんの方法でもいいんじゃないかな。

うん。その方が簡単だ。

あれ? でもそれだったら(1)からやればいいじゃん。

確かに。

みよちゃんは、最も一般的な式のまま計算したってことだね。私なら絶対最後までたどり着かない。

でも、簡単にできるところは簡単にした方がいいよ。この問題、最初から\(A = (1, 0)\)とおければ、割とすんなり解けるからね。じゃあ、次行くよ。

2007年文系数学 第4問 空間2直線上の点を結ぶ線分

問題
座標空間で点\((3, 4, 0)\)を通り、ベクトル\(\vec{d} = (1, 1, 1)\)に平行な直線を\(l\), 点\((2, 1, 0)\)を通りベクトル\(\vec{b} = (1, -2, 0)\)に平行な直線を\(m\)とする。点\(P\)は直線\(l\)上を、点\(Q\)は直線\(m\)上をそれぞれ勝手に動くとき、線分\(PQ\)の長さを求めよ。

それ、私がやる。ってか、まともに解けたの、これを含めて2, 3問くらいしかないし。

おっけい。じゃあ、みっちゃん!

これ、点\(P, Q\)を成分で表して計算するだけだもんね。
\(P\)について
$$
{\bf P} = \left( \begin{array}{c} 3 \\ 4 \\ 0 \end{array} \right)
+
l\left( \begin{array}{c} 1 \\ 1 \\ 1 \end{array} \right)
=
\left( \begin{array}{c} 3+l \\ 4+l \\ l \end{array} \right)
$$
\(Q\)について
$$
{\bf Q} = \left( \begin{array}{c} 2 \\ -1 \\ 0 \end{array} \right)
+
m\left( \begin{array}{c} 1 \\ -2 \\ 0 \end{array} \right)
=
\left( \begin{array}{c} 2+m \\ -1-2m \\ 0 \end{array} \right)
$$
\begin{eqnarray}
PQ^{2}
&=&
(1+l-m)^{2} + (5+l+2m)^{2}+l^{2} \\
&=&
3l^{2}+2(m+6)l+5m^{2}+18m+26 \\
&=&
3\left( l+\frac{1}{3}(m+6) \right)^{2}-\frac{(m+6)^{2}}{3}+5m^{2}+18m+26 \\
&=&
3\left( l+\frac{1}{3}(m+6) \right)^{2} +\frac{14}{9}(m^{2}+3m+3) \\
&=&
3\left( l+\frac{1}{3}(m+6) \right)^{2} + \frac{14}{9}\left( m+\frac{3}{2} \right)^{2}+\frac{7}{2}
\end{eqnarray}
だから、\(PQ^{2}\)の最小値は\(\frac{7}{2}\)になって、\(PQ>0\)だから、\(PQ\)の最小値は\(PQ^{2}\)が最小になる時で、
$$\frac{\sqrt{14}}{2}$$
どう?

うん、正解だよ。計算バッチリ。

うん。だって、なんども見直ししたから。

見直しするときは、こういう問題の時は\(l\)から平方完成するのと\(m\)で平方完成する2通りを試すといいよね。それで一致したら、まず間違いないから。

2002年文系数学 第2問 空間ベクトルの扱い方

問題
四角形\(ABCD\)を底面とする四角錐\(OABCD\)は\(\overrightarrow{OA}+\overrightarrow{OC} = \overrightarrow{OB}+ \overrightarrow{OD}\)を満たしており、\(0\)と異なる4つの実数\(p, q, r, s\)に対して4点\(P, Q, R, S\)を\(\overrightarrow{OP} = p\overrightarrow{OA}, \overrightarrow{OQ} = q\overrightarrow{OB}, \overrightarrow{OR} = r\overrightarrow{OC}, \overrightarrow{OS} = s\overrightarrow{OD}\)によって定める。このとき、\(P, Q, R, S\)が同一平面上にあれば
$$\frac{1}{p} + \frac{1}{r} = \frac{1}{q} + \frac{1}{s}$$
が成立することを示せ。

 

さぁ、これはどうする?

じゃ、そろそろ私もやろうかな。この問題、かなりスッキリするし。

はい、ようこちゃん、任せた!

あんまり役には立たないけど、一応図を描くよ。

任意の3点は必ず同一平面上にあるようにできるから、\(P, Q, R\)が同一平面上にあると仮定するよ。このとき\(x+y+z=1\)として
\begin{eqnarray}
\overrightarrow{OS}
&=& x\overrightarrow{OP} + y\overrightarrow{OQ} + z\overrightarrow{OR} \\
s\vec{d} &=&
px\vec{a} + qy\vec{b} + rz\vec{c} \\
\vec{d} &=&
\frac{px}{s}\vec{a} + \frac{qy}{s}\vec{b} + \frac{rz}{s}\vec{c} \\
\end{eqnarray}
が成り立つ。次に、問題文の条件から
$$\vec{d} = \vec{a}-\vec{b}+\vec{c}$$
が成り立つ。\(\vec{a}, \vec{b}, \vec{c}, \vec{d}\)は1次独立なので、係数比較ができる。その結果
$$\frac{px}{s} = 1, \frac{qy}{s} = -1, \frac{rz}{s} = 1$$
$$x = \frac{s}{p}, y = -\frac{s}{q}, z = \frac{s}{r}$$
が成り立つ。\(x+y+z = 1\)なので
\begin{eqnarray}
\frac{s}{p} – \frac{s}{q} + \frac{s}{r} &=& 1 \\
\frac{s}{p} + \frac{s}{r} &=& \frac{s}{q} + 1 \\
\frac{1}{p} + \frac{1}{r} &=& \frac{1}{q} + \frac{1}{s}
\end{eqnarray}
でフィニッシュ。

うん、お見事。ただ、文字で割り算をするときは、やっぱり、その文字が0じゃないことを言った方がいいよね。頭の中では当たり前のつもりで計算してるんだけど。

あと、1次独立?のくだりは必要なの? いまいち使い方がわからないんだけど。ごめん、多分みんな知ってるんだろうけど。

いやいや、それ、重要だよ。じゃあ、ようこちゃん、説明できる?

え? 私なの? じゃ、じゃあ、もっと簡単な例で考えるよ。例えば、ある平面ベクトルを2通りの書き方
$$\vec{p} = a\vec{x} + b\vec{y},\ \vec{p} = c\vec{x} + d\vec{y}$$
で書くとするよ。\(\vec{p}, \vec{x}, \vec{y}\)は全部平面ベクトルね。まず、1次独立というのは次の2つのことを満たすベクトルの関係ね。
1. \(\vec{x}\)と\(\vec{y}\)はともに\(\vec{0}\)ではない。
2. \(\vec{x}\)と\(\vec{y}\)は平行または反平行ではない。つまり、ある定数を\(k\)として、\(\vec{x} = k\vec{y}\)という形では表せない。
それで、もし1次独立だとするなら、どうなるか。
\begin{eqnarray}
a\vec{x} + b\vec{y} &=& c\vec{x} + d\vec{y} \\
(a-c)\vec{x} &=& (b-d)\vec{y} \\
\end{eqnarray}
\(a\neq c\)と仮定すると
$$\vec{x} = \frac{b-d}{a-c}\vec{y}$$
で、\(\vec{x}\)と\(\vec{y}\)が1次独立であることと矛盾する。\(b-d = 0\)だったら\(\vec{x} = \vec{0}\)となって矛盾だし、\(b-d \neq 0\)でも平行関係になって矛盾する。だから、\(a\neq c\)と仮定したのが間違いで、\(a = c\)でなければならない。同様に\(b = d\)でなければならない。
こんな感じで、1次独立であることと、平面上のベクトルが2つの1次独立なベクトルで1意に表せるってところに、係数比較の正当性があるんだよ。

そっか。1次独立じゃなかったら、\(\vec{p}\)をいろんな書き方で表せちゃうから、係数比較ができないってことか。だから、係数比較をする時は、1次独立であることをちゃんと言わないとダメなんだね。

そういうこと。これも頭の中では当たり前だと思っちゃってるかもしれないけど、係数比較をする時は、必ず1次独立であることの確認が必要だよ。ちゃんとわかってますよ! ってアピールしないと。

私は今まで、嘘アピールしてたからなぁ。とりあえず、おまじないでつけとくかって。でも、ようこちゃんのおかげでわかったよ。ありがとう。

どういたしまして。

みよちゃん! みよちゃん、起きてる?

あ、まみ。どこまで行った?

もう、なんでみよちゃんは、すぐ眠っちゃうんだろう。次4つめだよ。

じゃあ、まだあたしは大丈夫でしょ。

みよちゃんの意見は重要なんだから、ちゃんと聞いててよぉ。

わかったよ。

2001年文系数学 第2問 4点に対するあるベクトルの内積

問題
\(xy\)平面内の相異なる4点\(P_{1}, P_{2}, P_{3}, P_{4}\)とベクトル\(\vec{v}\)に対し、\(k\neq m\)のとき\(\overrightarrow{P_{k}P_{m}}\cdot \vec{v}\neq 0\)が成り立っているとする。このとき、\(k\)と異なるすべての\(m\)に対し\(\overrightarrow{P_{k}P_{m}}\cdot\vec{v} < 0\)が成り立つような点\(P_{k}\)が存在することを示せ。

これね、さっぱりわからなかった。何から手をつけたらいいかもわかんないし。

私も、よくわからなかったな。

ようこちゃんもだめ? ちなみに、みよちゃんは?

多分、できてると思うけど。

まぁ、でも順番的にここはあたしがやるか! いろんなやり方があるけど、あたしは背理法で行くよ。

背理法では、「\(k\)と異なるすべての\(m\)に対し\(\overrightarrow{P_{k}P_{m}}\cdot\vec{v} < 0\)が成り立つような点\(P_{k}\)が存在しない」ことを仮定する。このことは条件より、\(\overrightarrow{P_{k}P_{m}}\cdot \vec{v}\neq 0\)だから、いずれの\(k\)においても\(\overrightarrow{P_{k}P_{m}}\cdot \vec{v} > 0\)となるパートナー\(m\)が存在することと同値。
以下、\(k_{1}, k_{2}, k_{3}, k_{4}\)は重複なく1から4いずれかが割り当てられるとして
\begin{eqnarray}
\overrightarrow{P_{k_{1}}P_{m_{1}}}\cdot\vec{v} &>& 0 \\
\overrightarrow{P_{k_{2}}P_{m_{2}}}\cdot\vec{v} &>& 0 \\
\overrightarrow{P_{k_{3}}P_{m_{3}}}\cdot\vec{v} &>& 0 \\
\overrightarrow{P_{k_{4}}P_{m_{4}}}\cdot\vec{v} &>& 0
\end{eqnarray}
について考える。

\(m_{1} \neq k_{1}\)であり、\(k_{2}, k_{3}, k_{4}\)のいずれかは\(m_{1}\)と等しい。今、\(k_{2} = m_{1}\)としても一般性を失わない。ここで、\(m_{2} \neq k_{2} = m_{1}\)を\(m_{2} = k_{1}\)と選ぶと
\begin{eqnarray}
0 < \overrightarrow{P_{k_{1}}P_{m_{1}}}\cdot\vec{v} +
\overrightarrow{P_{m_{1}}P_{k_{1}}}\cdot\vec{v}
&=&
\overrightarrow{P_{k_{1}}P_{k_{1}}}\cdot\vec{v} \\
&=&
0
\end{eqnarray}
となり、矛盾。

ゆえに、\(m_{2}\)は、\(k_{3}, k_{4}\)のいずれかと等しい。今、\(k_{3} = m_{2}\)としても一般性を失わない。すると、
\(m_{3} \neq k_{3} = m_{2}\)の選び方は3通りある。
(1) \(m_{3} = k_{1}\)のとき
\begin{eqnarray}
0 < \overrightarrow{P_{k_{1}}P_{m_{1}}}\cdot\vec{v} +
\overrightarrow{P_{m_{1}}P_{m_{2}}}\cdot\vec{v} +
\overrightarrow{P_{m_{2}}P_{k_{1}}}\cdot\vec{v}
&=&
\overrightarrow{P_{k_{1}}P_{k_{1}}}\cdot\vec{v} \\
&=&
0
\end{eqnarray}
となり、矛盾。
(2) \(m_{3} = k_{2} = m_{1} \)のとき
\begin{eqnarray}
0 < \overrightarrow{P_{m_{1}}P_{m_{2}}}\cdot\vec{v} +
\overrightarrow{P_{m_{2}}P_{m_{1}}}\cdot\vec{v}
&=&
\overrightarrow{P_{m_{1}}P_{m_{1}}}\cdot\vec{v} \\
&=&
0
\end{eqnarray}
となり、矛盾。

よって、\(m_{3} = k_{4}\)と選ばなければならない。最後、\(m_{4}\neq k_{4} = m_{3}\)の選び方は3通りある。
(1) \(m_{4} = m_{1}\)のとき
\begin{eqnarray}
0 < \overrightarrow{P_{m_{1}}P_{m_{2}}}\cdot\vec{v} +
\overrightarrow{P_{m_{2}}P_{m_{3}}}\cdot\vec{v} +
\overrightarrow{P_{m_{3}}P_{m_{1}}}\cdot\vec{v}
&=&
\overrightarrow{P_{m_{1}}P_{m_{1}}}\cdot\vec{v} \\
&=&
0
\end{eqnarray}
となり、矛盾。
(2) \(m_{4} = m_{2}\)のとき
\begin{eqnarray}
0 < \overrightarrow{P_{m_{2}}P_{m_{3}}}\cdot\vec{v} +
\overrightarrow{P_{m_{3}}P_{m_{2}}}\cdot\vec{v}
&=&
\overrightarrow{P_{m_{2}}P_{m_{2}}}\cdot\vec{v} \\
&=&
0
\end{eqnarray}
となり、矛盾。
(3) \(m_{4} = k_{1}\)のとき
\begin{eqnarray}
0 < \overrightarrow{P_{k_{1}}P_{m_{1}}}\cdot\vec{v} + \overrightarrow{P_{m_{1}}P_{m_{2}}}\cdot\vec{v} +
\overrightarrow{P_{m_{2}}P_{m_{3}}}\cdot\vec{v} +
\overrightarrow{P_{m_{3}}P_{k_{1}}}\cdot\vec{v}
&=&
\overrightarrow{P_{k_{1}}P_{k_{1}}}\cdot\vec{v} \\
&=&
0
\end{eqnarray}
となり、矛盾。
ゆえに、条件を満たす\(m_{1}, m_{2}, m_{3}, m_{4}\)の組み合わせは存在しないので、仮定が誤りである。したがって、\(k\)と異なるすべての\(m\)に対し\(\overrightarrow{P_{k}P_{m}}\cdot\vec{v} < 0\)が成り立つような点\(P_{k}\)は存在する。

文字が多すぎて、理解が追いつかない……。

あ、ごめん。ちょっとわかりにくいかも。

ポイントは
\begin{eqnarray}
\overrightarrow{P_{k_{1}}P_{m_{1}}}\cdot\vec{v} &>& 0 \\
\overrightarrow{P_{k_{2}}P_{m_{2}}}\cdot\vec{v} &>& 0 \\
\overrightarrow{P_{k_{3}}P_{m_{3}}}\cdot\vec{v} &>& 0 \\
\overrightarrow{P_{k_{4}}P_{m_{4}}}\cdot\vec{v} &>& 0
\end{eqnarray}
で、これを満たすような\(m_{1}, m_{2}, m_{3}, m_{4}\)の組み合わせが存在しないことを、示してるんだよね。1つ1つ丁寧に追えば、まぁ、わかるかな。

みよちゃんは、まさか、同じ方法じゃないよね。

まみ、難しく考えすぎじゃない?

え〜、これでも単純に考えた結果なんだけどなぁ。みよちゃんのやり方、教えてよ!

あたしは……問題文に素直に考えたよ。
適当な点を\(O\)とする。
\begin{eqnarray}
\overrightarrow{P_{k}P_{m}}\cdot \vec{v} &\neq& 0 \\
(\overrightarrow{OP_{m}}-\overrightarrow{OP_{k}})\cdot\vec{v} &\neq& 0 \\
\overrightarrow{OP_{m}}\cdot\vec{v}-\overrightarrow{OP_{k}}\cdot\vec{v} &\neq& 0
\\
\overrightarrow{OP_{m}}\cdot\vec{v} &\neq& \overrightarrow{OP_{k}}\cdot\vec{v}
\end{eqnarray}
つまり、\(\overrightarrow{OP_{i}}\cdot \vec{v}\) \((i = 1, 2, 3, 4)\)はいずれも異なる値となる。そこで、\(\overrightarrow{OP_{i}}\)が最大の値をもつ\(i\)を\(i = i_{max}\)とする。\(k = i_{max}\)と選べば、\(m \neq i_{max}\)となるすべての\(m\)について
$$\overrightarrow{P_{i_{max}}P_{m}}\cdot \vec{v} = (\overrightarrow{OP_{m}}-\overrightarrow{OP_{i_{max}}})\cdot\vec{v} = \overrightarrow{OP_{m}}\cdot\vec{v}-\overrightarrow{OP_{i_{max}}}\cdot\vec{v}< 0 $$
が成り立つ。

お〜、すごい。エレガント。

確かに、それなら、わかる!

まみは、自分が理解できればいいって考えてるからなぁ。少しややこしい解法でもそのまま突っ走るんだよ。

みよちゃん、そんなに数学できるのに、なんで、文系なの?

なんでかなぁ。あんまり考えたことないや……。

じゃあ、まみ、次の問題は?

そうそう。私が解けるのにしてほしいなぁ。

ん? だったら、これじゃないかな。

2011年文系数学 第2問 空間ベクトルの基本解法

問題
四面体\(OABC\)において、点\(O\)から3点\(A, B, C\)を含む平面に下ろした垂線とその平面の交点を\(H\)とする。\(\overrightarrow{OA}\perp \overrightarrow{BC}, \overrightarrow{OB}\perp \overrightarrow{OC}, |\overrightarrow{OA}| = 2, |\overrightarrow{OB}| = |\overrightarrow{OC}| = 3, |\overrightarrow{AB}| = \sqrt{7}\)のとき、\(|\overrightarrow{OH}|\)を求めよ。

イメージとしては、誘導がないセンター試験の前半部分の問題、って感じかな。たぶん、みっちゃんはできたんじゃない?

あ、うん。これもできたよ。ちょっと計算が大変だったけど。

じゃあ、よろしく!

\(\overrightarrow{OH} = s\vec{a} + t\vec{b} + r\vec{c}\)とおく。点\(H\)は平面\(ABC\)上だから、\(s+t+r = 1\)が成り立つ。1つ1つ条件を使っていくと
(1) \(\overrightarrow{OA}\perp \overrightarrow{BC}\)
\(\vec{a}\cdot \vec{c}-\vec{a}\cdot\vec{b} = 0,\ \vec{a}\cdot\vec{c} = \vec{a}\cdot\vec{b}\)
(2) \(\overrightarrow{OB}\perp \overrightarrow{OC}\)
\(\vec{b}\cdot\vec{c} = 0,\ |\overrightarrow{BC}| = 3\sqrt{2}\)
(3) \(|\overrightarrow{AB}| = \sqrt{7}\)
\begin{eqnarray}
|\vec{b}-\vec{a}|^{2} &=& 7 \\
|\vec{b}|^{2} -2\vec{a}\cdot\vec{b} + |\vec{a}|^{2} &=& 7 \\
\vec{a}\cdot\vec{b} &=& \vec{a}\cdot\vec{c} = 3
\end{eqnarray}
これで、準備OK。あとは\(OH\)が平面ABCの垂線だということを使うと
(1) \(\overrightarrow{OH} \perp \overrightarrow{AC}\)
\begin{eqnarray}
\overrightarrow{OH} \cdot \overrightarrow{AC} &=&
(s\vec{a} + t\vec{b} + r\vec{c})\cdot(\vec{c}-\vec{a}) \\
&=&
s\vec{a}\cdot\vec{c} – s|\vec{a}|^{2}+t\vec{b}\cdot\vec{c}-t\vec{a}\cdot\vec{b}+r|\vec{c}|^{2}-r\vec{c}\cdot\vec{a} \\
&=&
-s-3t+6r = 0 \\
\end{eqnarray}
(2) \(\overrightarrow{OH} \perp \overrightarrow{BC}\)
\begin{eqnarray}
\overrightarrow{OH} \cdot \overrightarrow{BC} &=&
(s\vec{a} + t\vec{b} + r\vec{c})\cdot(\vec{c}-\vec{b}) \\
&=&
s\vec{a}\cdot\vec{c} -s\vec{a}\cdot\vec{b} + t\vec{b}\cdot\vec{c}-t|\vec{b}|^{2} + r|\vec{c}|^{2}-r\vec{c}\cdot\vec{b} \\
&=&
-t+r = 0 \\
\end{eqnarray}
これらの結果と、\(s+t+r=1\)を連立すると
$$s = \frac{3}{5}, t = \frac{1}{5}, r = \frac{1}{5}$$
だから\(\overrightarrow{OH}\)は
$$\overrightarrow{OH} = \frac{3}{5}\vec{a} + \frac{1}{5}\vec{b} + \frac{1}{5}\vec{c}$$
最後に、この大きさを求めると
$$|\overrightarrow{OH}|^{2} = \frac{90}{25},\ |\overrightarrow{OH}| = \frac{3\sqrt{10}}{5}$$
これが答え?

またまた正解! 空間ベクトルの基本的な解き方だね。

あ〜、よかった。少し計算量が多いから、間違えてないかドキドキするよ。

ベクトルを使わなくても解けそうだけど、計算だけしてれば解けるから、空間図形の問題に対してベクトルはいい解法だよね。中学生だと、なんとか初等幾何を使って解かないといけないから、大変。

次は、この問題。簡単そうに見えるけど、実は苦戦しやすい。

1985年文系数学 第1問 実数の存在条件

問題
実数\(p, q\ (q>0)\)に対して、下の2条件①、②を満たす三角形\(ABC\)が存在するための必要十分条件を求めよ。
① \(|\overrightarrow{BC}| = q\)
② \(\overrightarrow{AB}\cdot\overrightarrow{AC} = p\)
ただし、\(\overrightarrow{AB}\cdot\overrightarrow{AC}\)は\(\overrightarrow{AB}\)と\(\overrightarrow{AC}\)の内積を表す。

みよちゃん、解く?

え? うん、いいよ。
\(AB = b,\ AC = c\ (b>0,\ c>0)\)とする。
条件①と②から
\begin{eqnarray}
|\vec{c}-\vec{b}|^{2} &=& q^{2} \\
|\vec{c}|^{2} + |\vec{b}|^{2} -2\vec{b}\cdot\vec{c} &=& q^{2} \\
b^{2}+c^{2} &=& 2p+q^{2}
\end{eqnarray}
条件①から
\begin{eqnarray}
\vec{b}\cdot\vec{c} &=& p \\
bc\cos{\theta} &=& p \\
-1 &<& \frac{p}{bc} < 1 \\
bc &>& -p,\ p< bc\ (bc > 0)
\end{eqnarray}
ここで、\(\cos{\theta} = \pm 1\)のときは三角形ができないので除いた。
\(bc = k\)とおく。
$$(b+c)^{2} = b^{2}+c^{2}+2bc = 2p+q^{2}+2k$$
で、\(b+c > 0\)だから
$$b+c = \sqrt{2p+q^{2}+2k}$$
\(b, c\)を解とする2次方程式は
$$x^{2} – \left(\sqrt{2p+q^{2}+2k}\right)x+k = 0$$
この2次方程式が2つの正の実数解をもつことは、\(k > -p,\ p < k\)の下で
(1) \(bc = k > 0\)
(2) \(b+c = \sqrt{2p+q^{2}+2k} > 0\)
(3) \(D = (2p+q^{2}+2k)-4k \geq 0\)
を満たす\(k\)が存在することと同値。
(1), (2)は条件より、自動的に満たされる。ゆえに(3)のみ考える。
(3)より
$$k \leq p+\frac{1}{2}q^{2}$$
であり、\(k\)についての条件\(k > -p,\ p < k\)を考えると
(あ) \( -p < k \leq p+\frac{1}{2}q^{2}\)
(い) \(p < k\leq p+\frac{1}{2}q^{2}\)
を同時に満たす\(k\)が1つでも存在すればいい。

(あ)について
\begin{eqnarray}
-p &<& p + \frac{1}{2}q^{2} \\
0 &<& p + \frac{1}{4}q^{2}
\end{eqnarray}
となれば、\(k > -p\)となる\(k\)が少なくとも1つ存在する。

(い)について
今、\(q\neq 0\)だから、(い)を満たす\(k\)は必ず1つ存在する。
ゆえに、求める必要十分条件は
$$0 < p + \frac{1}{4}q^{2}$$

え〜と、途中からついていけてない。1つ聞いていい?

この2次方程式が2つの正の実数解をもつことは、\(k \geq -p,\ p\leq k\)の下で
(1) \(bc = k > 0\)
(2) \(b+c = \sqrt{2p+q^{2}+2k} > 0\)
(3) \(D = (2p+q^{2}+2k)-4k \geq 0\)
を満たす\(k\)が存在することと同値。


って言ってるけど、どうして\(k\)が存在することが同値なの?

そういう\(k\)が1つでも存在すれば、2次方程式を解いたときに出てくる2つの実数解が\(b, c\)になるでしょ。それで3辺の長さが決まる。

さすが、みよちゃん。じゃあ、ちょっと意地悪なこと聞いていい?
確かにみよちゃんの言うように\(k\)が1つでも存在すれば、3つの長さが決まるけど、それは本当に三角形の3辺になる?

まみが聞いているのは、三角形の成立条件が満たされるかどうかってこと?
今の場合
$$|b-c| < q < b+c$$
が満たされる必要があるね。

うん。それが満たされなくちゃ、三角形が存在するとは言えないよね。

それも自動的に満たされるよ。
$$bc > -p,\ p < bc$$
があるから。

みっちゃん、わかる?

ごめん、全くわからない。解説、お願いします。

じゃあ、2つの式
\begin{eqnarray}
(b+c)^{2} &=& 2p+q^{2}+2bc = q^{2} + 2(bc+p) \\
(b-c)^{2} &=& 2p+q^{2}-2bc = q^{2} + 2(-bc+p)
\end{eqnarray}
を見て。
\(bc > -p,\ p < bc\)、つまり\(bc + p > 0,\ p – bc < 0\)が成り立つなら
\begin{eqnarray}
(b+c)^{2} &=& 2p+q^{2}+2bc = q^{2} + 2(bc+p) > q^{2} \\
(b-c)^{2} &=& 2p+q^{2}-2bc = q^{2} + 2(p-bc) < q^{2}
\end{eqnarray}
なんだから
$$|b-c| < q < b+c$$
が満たされる。

なるほど。ってことは、\(\vec{b}\cdot\vec{c}\)が実数になることは、三角形の成立条件になっているってこと?

おっ、みっちゃん鋭い。でもちょっと違う。今の場合だと
$$-1 < \frac{p}{bc} < 1$$
が成り立つことが三角形の成立条件。\(bc > 0\)を課すなら
$$-bc < p,\ p < bc$$
が成り立つこと。

ごめん。あと1ついい?
(1) \(bc = k>0\)が条件より自動的に満たされる、って言ってるけど、\(k>0\)なんて条件あった?

それは、\(k > -p,\ p < k\)からわかる。この式は両方とも満たされるから、\(p\)が実数なら、正・負・0問わず、どの場合でも\(k>0\)になる。

うん。別の言い方をすると、\(k>0\)は\(k > -p,\ p < k\)に含まれているから、特別考える必要がない、ってことだね。

なるほど! よくわかりました。

次の問題は、結構やりやすいかも。

1978年文系数学 第2問 三角形の重心を通る直線

問題
\(\triangle{OAB}\)の重心\(G\)を通る直線が辺\(OA, OB\)とそれぞれ辺上の点\(P, Q\)で交わっているとする。\(\overrightarrow{OP} = h\overrightarrow{OA},  \overrightarrow{OQ} = k\overrightarrow{OB}\)とし、\(\triangle{OAB}, \triangle{OPQ}\)の面積をそれぞれ\(S, T\)とすれば、次の関係式が成り立つことを示せ。

(1)
$$\frac{1}{h} + \frac{1}{k} = 3$$
(2)
$$\frac{4}{9}S \leq T \leq \frac{1}{2}S$$

これさ、私がさっきやった空間図形の問題と似てるよね。

ってことで、ようこちゃん、やる?

いいよ、やろっか。

図は、こんな感じだね。\(PG:GQ = 1-m:m (m\neq 0)\)とおくと
$$\overrightarrow{OG} = mk\overrightarrow{OA} + (1-m)h\overrightarrow{OB}$$
で、重心の性質から
$$\overrightarrow{OG} = \frac{1}{3}\overrightarrow{OA} + \frac{1}{3}\overrightarrow{OB}$$
となって、\(\overrightarrow{OA}, \overrightarrow{OB}\)は1次独立だから係数比較ができて
$$mk = \frac{1}{3},\ (1-m)h = \frac{1}{3}$$
\begin{eqnarray}
\left(1-\frac{1}{3k}\right)h &=& \frac{1}{3} (m\neq 0) \\
1-\frac{1}{3k} &=& \frac{1}{3h} (h\neq 0) \\
\frac{1}{h} + \frac{1}{k} &=& 3
\end{eqnarray}
これで、(1)が終了。(2)はベクトルは使わないで解けるかな。
\(T\)は共通角を挟む線分の比と面積の関係から
$$T = hkS,\ \frac{S}{T} = \frac{1}{hk}\ (h, k, T \neq 0)$$
ここで\(\frac{1}{h} = x,\ \frac{1}{k} = y\)とおくと\(x+y = 3\)
\begin{eqnarray}
\frac{S}{T} &=& x(3-x) \\
&=& -x^{2}+3x \\
&=& -\left( x-\frac{3}{2} \right)^{2} +\frac{9}{4} \\
\end{eqnarray}
\(\frac{1}{2}\leq h \leq 1\)より、\(x = \frac{1}{h}\)の取りうる値の範囲は
$$1\leq x \leq 2$$
したがって、\(\frac{S}{T}\)の最大値は\(\frac{9}{4}\), \(\frac{S}{T}\)の最小値は2となる。以上より
$$2\leq \frac{S}{T} \leq \frac{9}{4}$$
$$\frac{4}{9}S\leq T \leq \frac{1}{2}S$$
最大値・最小値を出すときは微分でもできるけど、分数関数の微分になって、文系数学の範疇を超えるから、2次関数で解く解法にしたよ。

ようこちゃん、気配りが細かい。

ようこちゃんに質問。\(\frac{1}{2}\leq h \leq 1\)はどこから?

うん、それは\(P, Q\)を通る直線が重心を通っているっていうところから来ているよ。

\(P\)が\(A\)に一致するとき、\(h\)は最大1となるよね。

この図のように、\(P\)をできる限り\(O\)に近づけようと思っても、\(Q\)が\(B\)に一致するときが限界で、そのとき、重心の性質から\(h = \frac{1}{2}\)になるよね。だから
$$\frac{1}{2}\leq h \leq 1$$
が成り立つ。

おお、ありがとう。図を使うと見やすい。

ようこちゃんは、いつも図を使って解くもんね。

そのほうが見やすいからね。図形問題は絶対図を使った方がいいと思うよ。

次は、順番的にあたしか。問題は、これだね。

2004年文系数学 第3問 三角形と円の交点への位置ベクトル

問題
\(\triangle{OAB}\)において、\(\vec{a} = \overrightarrow{OA}, \vec{b} = \overrightarrow{OB}\)とする。
$$|\vec{a}| = 3,\ |\vec{b}| = 5,\ \cos{(\angle AOB)} = \frac{3}{5}$$
とする。このとき、\(\angle AOB\)の2等分線と, \(B\)を中心とする半径\(\sqrt{10}\)の円との交点の、\(O\)を原点とする位置ベクトルを\(\vec{a}, \vec{b}\)を用いて表せ。

これ、途中まではいくんだけど、そこからどう進めばいいのか、わからなくなっちゃった。

途中ってどこ?

\(\overrightarrow{OM}\)を求めたとこ。それの何倍かになってるのはわかったけど、辺の比が求められなかった。

あ、それね。私もかなり悩んだ。

よ〜し、じゃあ、解くよ。あたしは座標平面に置くより初等幾何で解きたいから、そうするね。辺の比は普通相似とか2等分線で求めにいくんだけど、辺の長さを出して直接比を出すって方法もあるよ。ようこちゃんにあやかって、あたしも図を描くね。

直線\(OM\)は\(\angle O\)の2等分線だから、みんなのいう通り、\(\overrightarrow{OM}\)はすぐに求められて
$$\overrightarrow{OM} = \frac{3}{8}\vec{a} + \frac{5}{8}\vec{b}$$
になる。求めるものは\(\overrightarrow{OC}, \overrightarrow{OD}\)だから、\(OC:OM:OD\)の比がわかれば解決する。
あたしの方針は、\(OC, OM, OD\)の長さを全て求めてしまうこと。図を見ると、\(\triangle{OBC}\)で余弦定理が使えることがわかる。
\(\angle BOM = \theta\)とおくと
\begin{eqnarray}
\cos{2\theta} &=& \frac{3}{5} \\
2\cos^{2}{\theta} – 1 &=& \frac{3}{5} \\
\cos^{2}{\theta} &=& \frac{4}{5} \\
\cos{\theta} &=& \frac{2}{\sqrt{5}}\ \left(\theta < \frac{\pi}{2}\right)
\end{eqnarray}
この結果を使って、余弦定理を使う。\(OC = x\)とおくと
\begin{eqnarray}
10 &=& x^{2} + 25 -10x\cdot \frac{2}{\sqrt{5}} \\
x^{2} – 4\sqrt{5}x +15 &=& 0 \\
x &=& \sqrt{5},\ 3\sqrt{5}
\end{eqnarray}
ここで出てきた2つの解は、それぞれ短い方から\(OC, OD\)に対応する。
次に\(OM\)を求める。
\begin{eqnarray}
\overrightarrow{OM} &=& \frac{3}{8}\vec{a} + \frac{5}{8}\vec{b} \\
|\overrightarrow{OM}|^{2} &=& \frac{1}{64}(25|\vec{a}|^{2} + 9|\vec{b}|^{2} + 30\vec{a}\cdot\vec{b}) \\
&=& \frac{45}{4} \\
|\overrightarrow{OM}| &=& \frac{3\sqrt{5}}{2}
\end{eqnarray}
よって、\(OC:OM:OD = 2 : 3 : 6\)となる。
\begin{eqnarray}
\overrightarrow{OC} &=& \frac{2}{3}\overrightarrow{OM} \\
&=& \frac{5}{12}\vec{a} + \frac{1}{4}\vec{b} \\
\overrightarrow{OD} &=& 2\overrightarrow{OM} \\
&=& \frac{5}{4}\vec{a} + \frac{3}{4}\vec{b}
\end{eqnarray}
が答え。

あれ? 不思議。こうやってみると、すごく簡単な問題に見えるなぁ。なんでできなかったんだろ?

ん〜、辺の比を出すときに、辺の長さから直接出すっていう経験があまりないからかなぁ? なんでだろう? みよちゃんはどうやって解いた?

ん? ああ、この問題は、三角形の形状を決めて、\(O\)が座標軸の原点になるように座標平面において、計算した。

みよちゃんは、座標平面におく方が好き?

好きってわけじゃないよ。多分、そうしたかったから、だと思う。

まみは初等幾何にロマンを感じているみたいだから。

え? どこにロマンがあるの?

みっちゃんはまだ、初等幾何の面白さに気づいてないんだ。

みう、一度まみと一緒に初等幾何の魅力を語り合ったらいいよ。私も一度似たようなことやったし。

そうだよ。そうしよう。

え、う、うん。よろしくお願いします……。

じゃあ、次ね。そろそろ終わりに近づいてきた。

1973年文系数学 第4問 正三角形の中心と3頂点を結ぶ直線への正射影

問題
\(\bf{a}, \bf{b}, \bf{c}\)は平面上の単位ベクトルで、どの2つも\(120^{\circ}\)の角度をなすものとする。このとき、この平面上の任意のベクトル\(\bf{x}\)に対して

(ⅰ) \((\bf{a}, \bf{x}) + (\bf{b}, \bf{x}) + (\bf{c}, \bf{x}) = 0\)が成り立つことを示せ。
(ⅱ) \((\bf{a}, \bf{x})^{2} + (\bf{b}, \bf{x})^{2} + (\bf{c}, \bf{x})^{2}\)の値を\(\bf{x}\)の大きさ\(l\)を用いて表わせ。

ただし、\((\bf{a}, \bf{x})\)などはベクトルの内積を表す。

これはどうする?

あ、私、やりたい。これが最後の解けた問題だから。

どうぞ!

え〜と、なんかよくわかんないけど、計算してたら解けたんだよね。問題文は内積を変な風に表してるけど、私は今まで使ってきたように”\(\cdot\)”で書くよ。

うん、全然いいよ。問題文は、大学の先生らしい書き方をしているんだ。

\(\vec{a}, \vec{x}\)のなす角を\(\theta\)とすると、\(\vec{b}, \vec{x}\)のなす角は\(120^{\circ}-\theta\)で、\(\vec{c}, \vec{x}\)のなす角は\(120^{\circ}+\theta\)だから
\begin{eqnarray}
& & \vec{a}\cdot\vec{x} + \vec{b}\cdot\vec{x} + \vec{c}\cdot\vec{x} \\
&=& l\cos{\theta} + l\cos{(120^{\circ}-\theta)} + l\cos{(120^{\circ}+\theta)} \\
&=& l\left( \cos{\theta} + \left( -\frac{1}{2}\cos{\theta} + \frac{\sqrt{3}}{2}\sin{\theta} \right) + \left( -\frac{1}{2}\cos{\theta} – \frac{\sqrt{3}}{2}\sin{\theta} \right) \right) \\
&=& 0
\end{eqnarray}
となって証明終了。次は、(ⅱ)だね。

\begin{eqnarray}
& & (\vec{a}\cdot\vec{x})^{2} + (\vec{b}\cdot\vec{x})^{2} + (\vec{c}\cdot\vec{x})^{2} \\
&=& l^{2}\left( \cos^{2}{\theta} + \left( -\frac{1}{2}\cos{\theta} + \frac{\sqrt{3}}{2}\sin{\theta} \right)^{2} + \left( -\frac{1}{2}\cos{\theta} – \frac{\sqrt{3}}{2}\sin{\theta} \right)^{2} \right) \\
&=& l^{2} \left( \cos^{2}{\theta} + \frac{1}{4}\cos^{2}{\theta} + \frac{3}{4}\sin^{2}{\theta} + \frac{1}{4}\cos^{2}{\theta} + \frac{3}{4}\sin^{2}{\theta} \right) \\
&=& l^{2}\left( \frac{3}{2}\cos^{2}{\theta} + \frac{3}{2}\sin^{2}{\theta} \right) \\
&=& \frac{3}{2}l^{2}
\end{eqnarray}

これで、いいんだよね。

うん、バッチリ。

あっそうなんだ。でも、この問題、ちょっと不思議っていうか、一体何を計算させられてたのか、わかんないなぁ。

まず、この図を見てみよう。

こんな感じで、\(|\vec{a}|\)を\(X\)軸に投影したものを\(X\)軸への正射影っていうんだけど、長さは\(|\vec{a}|\cos{\theta}\)で表せる。これは別の書き方もできて、\(X\)軸方向の単位ベクトルを\(\vec{e_{x}}\)とすると
$$\vec{a}\cdot\vec{e_{x}} = |\vec{a}|\cos{\theta}$$
だから、\(\vec{a}\cdot\vec{e_{x}}\)が\(X\)軸方向への正射影を表している。同様に考えると、\(Y\)軸方向の単位ベクトルを\(\vec{e_{y}}\)として
$$\vec{a}\cdot\vec{e_{y}} = |\vec{a}|\cos{(90^{\circ}-\theta)} = |\vec{a}|\sin{\theta}$$
が\(Y\)軸方向への正射影だね。

うん。特に、\((\vec{a}\cdot\vec{e_{x}})\vec{e_x} \)としたものを\(X\)軸への正射影ベクトルというよね。

そうだね。それで、問題の方はというと

こんな感じ。

あれ? 問題文って、こういうこと言ってたっけ。これ、正三角形なの?

そうだよ。問題文は3つのベクトルがあるって言ってるだけだけど、始点を揃えると、ちょうど正三角形の重心から3本のベクトルが伸びているのと同じになる。それで、それらの3本のベクトルは単位ベクトルだから、さっきの例でいうと\(X\)軸、\(Y\)軸の単位ベクトルみたいな感じ。つまり、今は3つの軸が平面上にあるという風にイメージすればいいかな。

そうすると、\(\vec{a}\cdot\vec{x}\)が\(|\vec{x}|\)の、なんていうか\(A\)軸? への正射影になってるのかな。

そうそう。他も同じように、各軸への正射影になってる。

符号を考慮すると、3軸への正射影の和が0になるというのは、面白いね。それに(ⅱ)はもっと面白いかも。これって、座標平面で考えると、距離に対応する概念だよね。

うん。座標平面の場合は
$$\sqrt{ (\vec{a}\cdot\vec{e_{x}})^{2} + (\vec{a}\cdot\vec{e_{y}})^{2} } = |\vec{a}|$$
となって、問題文の記号を使うと単に\(l\)だけど、この問題で”距離”に対応する量は
$$\sqrt{\frac{3}{2}l^{2}} = \frac{\sqrt{6}}{2}l$$
となって、ちょっと定義が変わっちゃうね。

なるほど、正射影という話が隠れてたのか。

正射影は、物理の力学分野ではよく使うからね。理系なら慣れておかないと困ることもあるかも。

う〜ん、私は文系だけど、一応物理も勉強してるからなぁ、そうなのか。

ようこちゃん、解説ありがとう! 次も問題としては単なる計算問題だけど、大学数学では重要になる、直交ベクトルの話だね。まぁ大学で大事なのは、直交行列の方なんだけど。

1977年文系数学 第1問 直交ベクトルの作り方

問題
2次方程式\(x^{2}+x-1 = 0\)の2つの根(解)\(a, b\)を成分にもつ、平面上のベクトル\(\bf{u}\)\(=(a, b)\)を考える。同じ平面上のベクトル\(\bf{v}\)\(=(c, d)\)で、\(\bf{u}\)と直交し、長さが\(1\)であるものの成分\(c, d\)を2つの根にもつ2次方程式を求めよ。

昔の教科書にはベクトルをボールド体で表していたのかな? 大学数学では当然のようにそのスタイルだけど、今は高校では矢印使うから。

これは私がやろうかな。

おっ、ようこちゃん。いいよ!

図を使って説明するね。

こんな感じで、\(a, b\)を\(-90^{\circ}\)回転させたあと、長さを1にすれば求めたい直交ベクトルが出てくるね。同様に、\(+90^{\circ}\)回転させた場合も直交ベクトルになる。で、実は\(a, b\)の取り方は2通りあるんだけど、今回は\(c, d\)を根に持つ2次方程式を求めるだけだから、\(a, b\)の取り方を1通りにして求めても大丈夫。

回転の式を使いやすいように\(|\vec{u}| = u\), \(\vec{u}\)と\(x\)軸のなす角を\(\theta\)とすると
\(a = u\cos{\theta},\ b = u\sin{\theta}\)だから
\begin{eqnarray}
c &=& \frac{1}{u}\cos\left( \theta\pm\frac{\pi}{2} \right) = \mp \frac{1}{u}\sin{\theta} \\
d &=& \frac{1}{u}\sin\left( \theta\pm\frac{\pi}{2} \right) = \pm \frac{1}{u}\cos{\theta} \\
\end{eqnarray}

実際に2次方程式を解くと\(x = \frac{-1+\sqrt{5}}{2}, \frac{-1-\sqrt{5}}{2}\)だから
$$u = \sqrt{3},\ \cos{\theta} = \frac{-1+\sqrt{5}}{2},\ \sin{\theta} = \frac{-1-\sqrt{5}}{2}$$
となるので
\begin{eqnarray}
c &=& \mp \frac{1}{u}\sin{\theta} = \pm \frac{1+\sqrt{5}}{2\sqrt{3}}
\\
d &=& \pm \frac{1}{u}\cos{\theta} = \pm \frac{-1+\sqrt{5}}{2\sqrt{3}}\\
\end{eqnarray}
となる。これらを解に持つ2次方程式は解と係数の関係から
$$x^{2} \pm\frac{\sqrt{15}}{3}x + \frac{1}{3} = 0$$

いいね。正解!

\(a, b\)の取り方は2通りあるっていうのは、\(x = \frac{-1+\sqrt{5}}{2}, \frac{-1-\sqrt{5}}{2}\)のうち、どっちを\(x\)とするかってことだよね? これを逆にしても、同じような回答でいいの?

うん。その場合は、今求めた\(c, d\)が逆になるだけだから、2次方程式の式としては変わらないよね。

あっそうか。2次方程式を求めるだけだから、ってそういうことか。

ちなみに、2成分だけなら\(a, b\)の直交ベクトルの1つは\((-b, a)\)だよ。内積をとればわかるけど、\(0\)になってるでしょ。

\((b, -a)\)もそうだよね。この2つは、私と同じ方法で求められる。

そっかぁ。じゃあ、3成分の場合は?

\((a, b, c)\)と直交するものってこと? いい質問だね。え〜と、どうすればいいかな。

みよちゃん? 起きてる?

あ、寝てたかも。ちょっと疲れてきた。

今、\((a, b, c)\)と直交するベクトルをどうやって求めるか話してたんだけど、どうすればいい?

……求めたいベクトルを\((x, y, z)\)とおいて、内積とってみたら?

そうか。平面の方程式と同じ感じだね。内積をとると\(ax + by + cz = 1\)だから定数の実数を\(s, t\)とすると\(c\neq0\)なら、
$$\vec{v} = (s, t, \frac{1-as-bt}{c})$$
が直交するベクトルになるね。

じゃあ、今度はみよちゃんの番! 

2000年文系数学 第1問 円に内接する四角形と正三角形

問題
円に内接する四角形\(ABPC\)は次の条件(イ), (ロ)を満たすとする。

(イ) 三角形\(ABC\)は正三角形である。
(ロ) \(AP\)と\(BC\)の交点は線分\(BC\)を\(p:1-p\ (0<p<1)\)の比に内分する。

このときベクトル\(\overrightarrow{AP}\)を\(\overrightarrow{AB}, \overrightarrow{AC}, p\)を用いて表せ。

じゃあ、解くよ。
\(AP\)と\(BC\)の交点を\(Q\)とする。条件(ロ)から
$$\overrightarrow{AQ} = p\overrightarrow{AC} + (1-p)\overrightarrow{AB}$$
定数を\(k\)とすると
$$\overrightarrow{AP} = k\overrightarrow{AQ}$$
だから定数\(k\)を求めればいい。
……図、書いた方がいい?

うん、是非、お願いします。

正三角形の1辺を1としても一般性を失わない。すると図のように長さが決まる。
\(\triangle{AQS}\)と\(\triangle{ATP}\)の相似から
\begin{eqnarray}
AQ : AS &=& AT : AP \\
AQ\cdot AP &=& AS\cdot AT = 1 \\
kAQ^{2} &=& 1 \\
k &=& \frac{1}{AQ^{2}}
\end{eqnarray}
\(AQ\)をベクトルを使って求める。
\begin{eqnarray}
\overrightarrow{AQ} &=& p\overrightarrow{AC} + (1-p)\overrightarrow{AB} \\
|\overrightarrow{AQ}|^{2} &=& p^{2}|\overrightarrow{AC}|^{2} + (1-p)^{2}|\overrightarrow{AB}|^{2} + 2p(1-p)\overrightarrow{AC}\cdot\overrightarrow{AB} \\
\end{eqnarray}
\(|\overrightarrow{AC}| = |\overrightarrow{AB}| = 1,\ \overrightarrow{AC}\cdot\overrightarrow{AB} = \frac{1}{2}\)だから
$$|\overrightarrow{AQ}|^{2} = p^{2}-p+1$$
$$k = \frac{1}{p^{2}-p+1}$$
以上より
$$\overrightarrow{AP} = \frac{p}{p^{2}-p+1}\overrightarrow{AC} + \frac{1-p}{p^{2}-p+1}\overrightarrow{AB}$$

なるほど。相似を使って長さを出すのか。私は、\(\overrightarrow{AQ}\)まで出してギブアップしてた。

方べきの定理を使う方法もあるよ。まぁ、似たようなものだけど。

さすが、みよちゃん。

もう、終わり?

あと1問あるよ! なんなら、みよちゃんやる?

え? あたしは、いいよ。

了解。その代わり、ちゃんと起きててよ。

1972年文系数学 第4問 内分点の原理

問題
3角形\(ABC\)の内部の1点\(P\)を頂点とする1つの平行四辺形を\(PQRS\)とする。\(P\)から\(Q\)へ向かう半直線が3角形\(ABC\)の周と交わる点を\(Q^{\prime}\)とし、\(R^{\prime}, S^{\prime}\)も同様の点とする。\(\overrightarrow{PQ} = a\overrightarrow{PQ^{\prime}}, \overrightarrow{PR} = b\overrightarrow{PR^{\prime}}, \overrightarrow{PS} = c\overrightarrow{PS^{\prime}}\)とおくとき、\(a+c\geq b\)が成立することを示せ。(\(\overrightarrow{PQ}\)などはベクトルを表わす)

この問題、計算量は全く多くないけど、過不足なく全ての場合を網羅することが難しい。

すべての場合っていうけど、1つもわからなかった人は?

あたしの説明を聞いてて欲しいな! なるべく丁寧に進めるから。
最初に、三角形の中に作られる平行四辺形が三角形の内部にすっぽり入っている場合を考えるよ。その場合、3つの可能性を考えなくちゃいけない。
(ケース1)
3点\(Q^{\prime}, R^{\prime}, S^{\prime}\)が同じ辺にある場合

この図で、\(Q^{\prime}R^{\prime} : R^{\prime}S^{\prime} = m:1-m\)とおく。また、\(\overrightarrow{PQ} = \vec{q}, \overrightarrow{PR} = \vec{r}, \overrightarrow{PS} = \vec{s}\)とする。
\begin{eqnarray}
\overrightarrow{PR^{\prime}} &=& (1-m) \overrightarrow{PQ^{\prime}} + m\overrightarrow{PS^{\prime}} \\
&=& \frac{1-m}{a}\vec{q} + \frac{m}{c}\vec{s} \\
\end{eqnarray}
一方で
$$\overrightarrow{PR^{\prime}} = \frac{1}{b}\vec{q} + \frac{1}{b}\vec{s}$$
ここで、\(\vec{q}, \vec{s}\)は一次独立だから係数比較により
$$\frac{1}{b} = \frac{1-m}{a},\ \frac{1}{b} = \frac{m}{c}$$
が成り立つ。
\begin{eqnarray}
\frac{1}{b} &=& \frac{1-\frac{c}{b}}{a} \\
a &=& b-c \\
a+c &=& b
\end{eqnarray}
よってケース1では
$$a+c = b$$
が成り立つ。
ここまでで、何か疑問はある?

ん〜、とりあえず、大丈夫かな。

じゃあ、ケース2にいくよ。
(ケース2)
\(S^{\prime}, R^{\prime}\)が同じ辺にあって、\(Q^{\prime}\)が異なる辺にあり、半直線\(PQ\)と半直線\(PS\)がともに\(R^{\prime}\)が乗っている辺を含む直線と交わる場合

この場合は図のように\(Q^{\prime\prime}\)を取り、\(PQ = a^{\prime}PQ^{\prime\prime}\)となるような\(a^{\prime} < a\)を定義する。ケース1の結果が使えて
$$a+c > a^{\prime} + c = b$$
となるからケース2では
$$a+c > b$$
が成り立つ。
また、\(Q^{\prime}, R^{\prime}\)が同じ辺にあって、\(S^{\prime}\)が異なる辺にある場合は、新たに\(c^{\prime}\)を定義することでケース2と同様に計算することができて
$$a+c > a+c^{\prime} = b$$
が成り立つ。
さらに、\(Q^{\prime}, R^{\prime}, S^{\prime}\)がすべて異なる辺にあっても、半直線\(PQ\)と半直線\(PS\)がともに\(R^{\prime}\)が乗っている辺を含む直線と交わるなら、\(a^{\prime}, c^{\prime}\)を定義することで
$$a+c > a^{\prime}+c^{\prime} = b$$
が成り立つ。

だから、最後は、半直線\(PQ\)か半直線\(PS\)のどちらかまたは両方が\(R^{\prime}\)が乗っている辺を含む直線と交わらないケース3を試せばいいね。

ちょっと待って! 整理したい!

今、ケース1では
3点\(Q^{\prime}, R^{\prime}, S^{\prime}\)が同じ辺にある場合
を考えた。
3点が同じ辺にないとすると
1. 2点が同じ辺で1点が異なる辺
2. すべてが異なる点
の2通りある。
ただ、どちらの場合も半直線\(PQ\)と半直線\(PS\)がともに\(R^{\prime}\)が乗っている辺を含む直線と交わるかどうかで考え方が変わってくる、ってことだね?

うん。だから
ケース2 : 半直線\(PQ\)と半直線\(PS\)がともに\(R^{\prime}\)が乗っている辺を含む直線と交わる
ケース3 : 半直線\(PQ\)と半直線\(PS\)のどちらか、または両方が\(R^{\prime}\)が乗っている辺を含む直線と交わらない
っていう風に分けたんだよ。

まず、半直線\(PQ\)が\(R^{\prime}\)が乗る辺を含む直線と交わらない場合を考えるよ。この場合は、\(R^{\prime}\)を通る直線を引き、それと半直線\(PQ, PS\)との交点を\(Q^{\prime\prime}, S^{\prime\prime}\)として、\(a^{\prime}, c^{\prime}\)を定義すると、\(R^{\prime}\)を通る直線によらず\(a^{\prime} < a, c^{\prime} < c \)となるので
$$a+c > a^{\prime}+c^{\prime} = b$$
が成り立つ。

次は半直線\(PQ\)と半直線\(PS\)の両方が\(R^{\prime}\)が乗っている辺を含む直線と交わらない場合。これも上のと同じように\(Q^{\prime\prime}, S^{\prime\prime}\)ができるから、同様だね。

さて、これで終わりかな? みよちゃん。

平行四辺形が三角形の内部にない場合は?

その通り。さすが。

例えばケース1でいうとこういう場合。ただ、この時は\(a > 1, b > 1, c > 1\)となるだけで、計算の内容は全く変わらないから、上のケース1~3と同様に示せる。もし\(Q\)だけが三角形を飛び出しても、\(a>1\)となるだけで、計算は変わらない。よって、平行四辺形が内部におさまる場合のみを示せば十分。

以上より
$$a+c \geq b$$
が示せた。

う〜ん。この場合分けを本番で思いついてやるのは難しいよ。

うん。あたしは難問に分類されると思ってる。最初にも言ったけど、過不足なく一般的な場合を示すことは難しいと思う。

終わり、かな?

みよちゃん。最後まで付き合ってくれてありがとう! ていうか、みんなも。

また、やろう!
今度は、平面図形、以外のを。

まぁ、勉強になるし。

りょうかい。じゃあ、何か考えておくね。みよちゃんも、またよろしく。

わかった。

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