自然数の和が-1/12になる? 〜京都大学大学院入試問題(理学研究科 平成24年度Ⅲ-I(2)(3))を使って考察する〜

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問題

(2) ガンマ関数\(\Gamma(\nu)\)はRe \(\nu > 0\)の領域では、

$$\Gamma(\nu)=\int_{0}^{\infty}dt e^{-t}t^{\nu-1}\ \ \ (B)$$

という積分で定義され、\(Re\nu \leq 0\)の領域については、
$$
\Gamma(\nu+1)=\nu\Gamma(\nu)\ \ \ (C)
$$
という関係式を用いてその定義域を拡張(解析接続)できる。

(a) \(Re \nu > 0\)のとき、\(\Gamma(\nu+1)=\nu\Gamma(\nu)\)を示し、正整数nに対して\(\Gamma(\nu)\)を計算せよ。
(b)\(\Gamma(\epsilon), \Gamma(-1+\epsilon)\)は、\(\epsilon \to 0\)のとき、\(\epsilon\)のどのような関数で近似的に表されるか、それぞれ示せ。

(3) リーマンのゼータ関数\(\zeta(\nu)\)は\(Re \nu > 1\)のとき\(\zeta(\nu)=\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n^{\nu}}\)で定義され、
$$
\zeta(\nu)=\frac{1}{\Gamma(\nu)}\int_{0}^{\infty}dt\frac{t^{\nu-1}}{e^{t}-1}=\frac{1}{\Gamma(\nu)}\int_{0}^{\infty}dte^{-t}t^{\nu-1}\frac{1}{1-e^{-t}}\ \ \ (D)
$$
という積分で表される。ここで、ガンマ関数\(\Gamma(\nu)\)の定義と性質については、(2)の問題文を参照し、解答の際には式(B)および式(C)を用いてもよい。

(a)\(Re \nu > 1\)のとき、式(D)の右辺が\(\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n^{\nu}}\)に一致することを示せ。
(b)\(\frac{1}{1-e^{-z}}\)を、原点z=0のまわりでローラン展開すると
$$
\frac{1}{1-e^{-z}}=\sum_{n=-1}^{\infty}A_{n}z^{n}     (E)
$$
と表せる。\(A_{-1}, A_{0}, A_{1}\)を求めよ。
(c)\(\zeta(\nu)\)は、\(Re \nu > 1\)の領域で、以下のようにあらわされることを示せ。
$$
\zeta(\nu)=\frac{1}{\Gamma(\nu)}\int_{0}^{\infty}dt e^{-t}t^{\nu-1}\left(\frac{1}{1-e^{-t}}-\sum_{n=-1}^{1}A_{n}t^{n}\right)+\left(\frac{A_{-1}}{\nu-1}+A_{0}+A_{1}\nu\right) \ \ \ (F)
$$
(d)式(F)は、解析接続を用いた\(\Gamma(\nu)\)および\(\zeta(\nu)\)の定義域の拡張により、\(Re \nu > -2\)の領域でも成り立つ関係式である。\(\nu=-1\)のとき、式(F)の右辺の第1項の(ガンマ関数の因子を除く)積分全体が有限になることを示し、\(\zeta(-1)\)を計算せよ。

回答

問題文が長いですが、それだけ丁寧な誘導がついているということですね。それでは長き道のりですが頑張ります。

(2)(a)部分積分を使っていけば、自然と導けます。

$$\Gamma(\nu+1) = \int_{0}^{\infty}dte^{-t}t^{\nu}$$

$$=[t^{\nu}e^{-t}]_{0}^{\infty}+\nu\int_{0}^{\infty}dtt^{\nu-1}e^{-t}$$

$$=\nu\Gamma(\nu)$$

(2)(b)

式(C)を用いて解析接続します。
$$
\Gamma(\epsilon+1)=\epsilon\Gamma(\epsilon)
$$
より、
$$
\lim_{\epsilon \to 0}\Gamma(\epsilon)=\frac{1}{\epsilon}\Gamma(1)=\frac{1}{\epsilon}
$$
また同様に
$$
\lim_{\epsilon \to 0}\Gamma(-1+\epsilon)=\frac{1}{(-1+\epsilon)\epsilon}=-\frac{1}{\epsilon}
$$
となります。これが発散するということが後の布石となります。
ここまでは難しくはない、しかし大切な準備です。

(3)(a)

これは統計力学という大学物理の中の量子統計という分野でよく使うテクニックで知らないと
思いつかないでしょうが等比数列の和の公式を逆向きに利用するという面白い技巧です。

$$\zeta(\nu)=\frac{1}{\Gamma(\nu)}\int_{0}^{\infty}dte^{-t}t^{\nu-1}\frac{1}{1-e^{-t}}$$

$$=\frac{1}{\Gamma(\nu)}\int_{0}^{\infty}dtt^{\nu-1}\sum_{n=1}^{\infty}(e^{-t})^{n}$$

$$=\frac{1}{\Gamma(\nu)}\sum_{n=1}^{\infty}\int_{0}^{\infty}dtt^{\nu-1}e^{-nt}$$

$$=\frac{1}{\Gamma(\nu)}\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n^{\nu}}\int_{0}^{\infty}dkk^{\nu-1}e^{-k}$$

$$\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n^{\nu}}$$

途中、\(nt=k, dt=\frac{dk}{n}\)の変数変換と、\(\int_{0}^{\infty}dkk^{\nu-1}e^{-k}=\Gamma(\nu)\)の定義式を利用しました。

(3)(b)

ローラン展開とありますが、テーラー展開の要領で進めていきます。
$$
e^{-z}=\sum_{n=0}^{\infty}\frac{1}{n!}(-z)^{n}=1-z+\frac{z^{2}}{2!}-\frac{z^{3}}{3!}+……
$$
と書けることから、
$$ \frac{1}{1-e^{-z}}=\frac{1}{1-(1-z+\frac{z^{2}}{2}-\frac{z^{3}}{6}+……)}$$

$$ \frac{1}{z-\frac{z^{2}}{2}+\frac{z^{3}}{6}+……}$$

$$ \frac{1}{z(1-\frac{z}{2}+\frac{z^{2}}{6}+……)}$$

$$\frac{1}{z(1-X(z))}$$
ここで、
$$
X(z)=\frac{z}{2}-\frac{z^{2}}{6}+……
$$
としました。z=0まわりのテーラー展開を実行すると

$$ \frac{1}{z(1-X(z))}$$

$$ \frac{1}{z}×(1+\frac{1}{2}z+\frac{1}{12}z^{2}+……)$$

$$\frac{1}{z}+\frac{1}{2}+\frac{1}{12}z+……$$

となります。よって
$$
A_{-1}=1, A_{0}=\frac{1}{2}, A_{1}=\frac{1}{12}
$$
です。これらの値が求まればクライマックスです。

(3)(c)

ここはただの式変形と\(\Gamma\)関数の積分です。ただ、なぜn=1までの差をとるのかについては無視せずに計算を進めていきましょう。

$$\zeta(\nu)= \frac{1}{\Gamma(\nu)}\int_{0}^{\infty}dte^{-t}t^{\nu-1}\frac{1}{1-e^{-t}}$$

$$=\frac{1}{\Gamma(\nu)}\int_{0}^{\infty}dte^{-t}t^{\nu-1}\left(\frac{1}{1-e^{-t}}-\sum_{n=-1}^{1}A_{n}t^{n}+\frac{A_{-1}}{t}+A_{0}+A_{1}t\right)$$

$$=\frac{1}{\Gamma(\nu)}\int_{0}^{\infty}dte^{-t}t^{\nu-1}\left(\frac{1}{1-e^{-t}}-\sum_{n=-1}^{1}A_{n}t^{n}\right)+\left(\frac{A_{-1}}{\nu-1}+A_{0}+A_{1}\nu\right)$$

最後の等号は、\(Re \nu > 1\)のときに\(\Gamma\)関数の定義式より導かれる
$$
\frac{1}{\Gamma(\nu)}\int_{0}^{\infty}dte^{-t}t^{\nu-2}=\frac{1}{\Gamma(\nu)}\Gamma(\nu-1)=\frac{1}{\nu-1}
$$
$$
\frac{1}{\Gamma(\nu)}\int_{0}^{\infty}dte^{-t}t^{\nu-1}=\frac{1}{\Gamma(\nu)}\Gamma(\nu)=1
$$
$$
\frac{1}{\Gamma(\nu)}\int_{0}^{\infty}dte^{-t}t^{\nu}=\frac{1}{\Gamma(\nu)}\Gamma(\nu)\nu=\nu
$$
を用いています。ここで、ローラン展開のtの2次以上の次数を減じなかったのは、\(\nu=-1\)を代入することが視野にあったからだと考えればよいでしょう。その場合、\(\Gamma\)関数で書きなおすとき、tの2次以上の部分にはファクター\((\nu+1)\)が加わりますので結局0となり、寄与しません。

(3)(d)

さて、とうとうここまで来ました。長い道のりでありましたがいよいよ最後の一本道です。すでに(2)の(b)で\(\Gamma(-1)\)が発散することは確認していますから、問題文の通り積分部分が有限であれば第1項は消えます。それを狙っているわけです。これは被積分関数を計算してみればよいでしょう。

$$\frac{1}{1-e^{-t}}-\sum_{n=-1}^{1}A_{n}t^{n}= A_{2}t^{2}+A_{3}t^{3}+……$$

となっています。

$$\int_{0}^{\infty}dte^{-t}t^{\nu-1}\left(\frac{1}{1-e^{-t}}-\sum_{n=-1}^{1}A_{n}t^{n}\right) $$

$$ =\int_{0}^{\infty}dte^{-t}t^{\nu-1}(A_{2}t^{2}+A_{3}t^{3}+\cdots\cdots)$$

$$ =\sum_{m=0}^{\infty}A_{m+2}\Gamma(\nu+m+2)$$

となります。\(\nu=-1\)のとき

$$ =\sum_{m=0}^{\infty}A_{m+2}\Gamma(\nu+m+2) = \sum_{m=0}^{\infty}A_{m+2}\Gamma(m+1)$$

$$\sum_{m=0}^{\infty}A_{m+2}\Gamma(m+1) < \sum_{m=0}^{\infty}\frac{(m+1)!}{(m+4)!} = \sum_{m=0}^{\infty}\frac{1}{(m+4)(m+3)(m+2)}$$

$$ < \sum_{m=0}^{\infty}\frac{1}{(m+4)(m+3)} = \frac{1}{3}$$

よってこの積分は有限となることがわかります。

以上より

$$ \zeta(-1)= \frac{A_{-1}}{\nu-1}+A_{0}+A_{1}\nu$$


$$ -\frac{1}{2}+\frac{1}{2}-\frac{1}{12}= -\frac{1}{12}$$

が導かれます。そしてこの\(\zeta\)こそ何をかいわんや
$$
\sum_{n=1}^{\infty}n
$$
のことで
$$
1+2+3+4+5+……+\infty = -\frac{1}{12}
$$
を主張していることになります。これは解析接続の結果だということはわかっておいた方がよいでしょう。

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